休眠打破とは

種子の発芽とは、成長を止めていた胚がふたたび成長を始め、通常、幼根が種皮を破って伸び始めることを指します。

野生の種子は完熟後、一般にしばらく発芽せず、「休眠」と呼ばれる状態に入ります。 休眠期間も原因も様々です。 休眠する種子のなかで、ある一定の低温期間(2か月前後)を経験しないと発芽が起らない種子を「低温要求性種子」と呼んでいます。

このような種子は温帯北部から亜寒帯の生育する植物に多く、自然の状態では発芽してすぐ冬になり、幼植物が低温の傷害を受けることなないように、気候に適応したものだといえましょう。 従って、人工的に低温を経験させてやると、いつでも発芽させることができます。 ただし、乾燥種子のまま低温においても、発芽能力はできません。種子を湿潤の状態にして低温に置くことが必要です。このような処理の方法は、昔から栽培家の間では良く行なわれていた方法です。

種子が休眠しているのは、多くの場合、胚の成長を抑制する物質(たとえばアブシシン酸という植物ホルモン)が多く種子中に含まれていることが原因だったり、逆に成長を促すホルモン(ジベレリンが一般的)が足りなかったり、あるいはその両方が原因であったりします。 例えばノイバラの種子には多量のアブシシン酸が含まれています。 ヘーゼルナッツではジベレリンの含量が少なく、低温処理とともに、その合成能力を備えてきます。 従って、低温要求性種子の場合は低温を経験している間に、これらの原因が取り除かれて、発芽能力が備わることになります。 低温要求性種子を低温に曝さないでも発芽させるには、ジベレリンで処理してやればよい場合が多くあります。 ジベレリンはアブシシン酸による阻害を抑える働きもします。

種名    適温(℃)  有効温度(℃)  処理期間(日)
ノイバラ   5      5〜8      50
ハナミズキ  5      1〜10     60〜90
リンゴ    5      5〜10     60〜90(ただし品種による)
サクラソウ  5      1〜5      150
ユリノキ   1〜10    1〜10     70
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